成功した経営者や有名人ほど、忘れるのが上手です。忘れることでストレスを解消してきたからこそ成功したともいえますと、新赤坂クリニックの松本康夫さんは語る。
生まれたときから、人間にはさまざまなストレスが襲い掛かってくる。学校でやったヘマ、受験、失恋、仲間うちでの裏切り・・・失敗や失意がどんどん積みあがっていくのが人生で、それらのすべてがストレスになる。
ところが、よくしたもので、「忘れる」という素晴らしい能力を人間は持っている。
 ある精神科医は「もし経験したことを一つも忘れることができなかったら、ほとんどの人間は30歳までに自殺してしまうだろう。つまり、嫌なことを忘れるというのは、人間に本能的に備わった防御本能なのです」と言う。
 忘却がストレスを追い払ってくれるのなら、その能力をフルに活用しない手はない。本能だけに任せず、積極的に忘れるように努力することだ。
 俳優の森繁久彌さんは嫌なことがあるとヨットで海に出て忘れ、日本精工の社長を長く務めた今里広記さんは気の合う友達と酒を飲んで大声で歌うか、碁を打って忘れた。

 健康の秘訣は、水をたくさん飲むといいそうです。真水ではなく日本茶や烏龍茶、コーヒー、紅茶でも構わない。ジュース類などの糖分の多いものは、カロリー過多になるので控えたほうがよい。
日本茶は、砂糖をいれる必要もなくビタミンCなども多くていい。
 朝の一杯は、眠っている間に汗をかいて濃くなった血液を薄めてくれる。血液が濃いと心筋梗塞や脳梗塞が起きやすく、朝方に起こりやすいのはこのせいだ。朝起きてすぐにジョギングする人は、血液が濃いので血管が詰まりやすく自殺行為に等しいとか。
また空っぽの胃に水が入ると反射で腸が働き出し、便秘の悩みを解消し肌をきれいにする。
食後に飲む水には口の中の洗浄効果があり、口臭や虫歯を防ぐ。番茶にはフッ素が多く含まれているので、虫歯予防にもいい。
ゴルフなど運動するときには、できるだけ水を飲むことだ。汗をかいて血液が濃くなったときにパットなどで緊張すると、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなる。
 ふつう、一日に2000から2500cc必要だが、食事などからも摂るので水やお茶を飲んで補うのは1800から2000ccとか。でも、アルコールは脱水作用があるので逆効果である。

 ノンフィクション作家の吉岡忍さんが、ミャンマーとの国境に近いタイ北部の森林に暮らす山岳民族のところを訪れたときの話である。
尾根やジャングルを歩き続けた末にようやくたどり着いた山岳民族の小さな村で、村長の家に何泊かした。
 毎朝、吉岡さんがコーヒーを勧めるのだが、村長は最初の日にちょっと匂いを嗅いだだけで、決して口をつけようともしない。とうとう五日目の朝、なぜ口をつけないのかを聞いてみた。すると村長は穏やかな口調で答えたという。
「もしそいつが一度飲んだら忘れられないくらい美味しいものだとしたら、村は困ったことになる。村長のわしは若い者に言いつけて、何日もかかる遠い町まで買いに行かせるかもしれない。そんなことが続いたら、この貧しい村はめちゃめちゃになってしまうじゃないか」
 振り返っていまの私たちはどうだろうか?いま、ここにある穏やかな生活に満足せず、何か新しいもの、美味しいものがないかと鵜の目鷹の目で捜し回り、後先も考えずに飛びついて喰い散らかし、あっという間に飽きてしまう。
 村長の言葉を、森の賢者の声、智恵者の声として耳を傾けたいものである。それが、この限りある地球とともに、心豊かに暮らしていくためのコツのような気がする。